愛しい時間

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ワッキー、オッケー。 テカテカ、オッケー。 口紅、オッケー。 ただ、一緒に帰るだけだと分かっているけど、これは身だしなみだ。 一人で帰ることが分かってる日には、チェックしないことをチェックしてるけど、これは身だしなみだべ。 足取りも軽く名古屋駅に向かったべ。 赤電車の中央改札のいつもの柱にたたずむ、くるくるくせ毛の殿方が藤木だ。 私の姿を発見した瞬間にふわっと笑って、片手をあげてくれる。 その藤木の目の前で、私も立ち止まって笑った。 「お疲れっす。オラ、エリー。」 「ぶはっ。お疲れ。仕事帰りなのに元気だね。」 目を細めて笑った藤木。 「仕事帰りだから元気なんじゃん。」 「あぁっ、そっか。いやでも、その時間まで元気を温存できないぐらいに疲れることもあるでしょ。」 並んで歩き出して改札を通り抜けて聞かれた言葉を考えてみた。 一理あるとは思うけどさ。 「今日の仕事が疲れ切ってしまうタイプの仕事だったとしても、仕事が終わって、次の予定に頭が切り替わった瞬間に元気がみなぎったと思う。なんて言うんだろうね、コージーに対してみなぎる性欲が湧くから。」 「ぶはっ、そういう言葉を普通に使うのはおよしなさい。」 私の肩に藤木の体が触れて、笑う藤木の揺れが伝わる。 階段を降りて、いつものホームでやってくる電車を見ながら、まだ来なくていいべ、藤木と一緒にいたいからと思った。 が、そういうときに限ってやってくるのが電車だべ。 「エリー、電車来たよっ。」 私の腕を引っ張って走ろうとする藤木の腕を反対の手で押さえて、制止した。 言い訳を考えないと。 「ヒールが折れたから走れない。」 ん??? って顔をした後に、私の足元を見て爆笑する藤木。 その間に、本来乗るべきはずの急行電車は去って行った。 「折れるようなヒールじゃないじゃん、おバカさん。」 ですね、私も思ったべ。
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