3465人が本棚に入れています
本棚に追加
/539ページ
「さっきから、僕ばっかりが質問してるなぁ。」
聞かれたことに手短に簡潔に答えていたら、そう言われた。
じゃぁ、私から何か聞くべきだろうか。
いや、でも藤木の個人情報を知っても別に・・・。
「アンジーとジェームズの店、自宅の隣にあるんですよね?」
「ん?そうそう。」
「仕事が終わった後、急いで帰ってもけっこう遅い時間ですよね?そんな時間まで営業してるんですか?」
「あぁ、フレックスタイムだから。コア時間が過ぎたらすぐに退社しても文句言われないんだよ。それに、アンジーとジェームズの店は融通が利くからさ。」
へー。
お得意様だからなのか、近所のよしみでなのか。
って言うか、藤木の仕事はいったいどんな仕事なんだ?
大きな会社で働いてる人なだけじゃないんか?
「藤木は、どんな仕事を?」
「会社員。国内営業本部ってとこで働いてて山根君と新藤君とは同じチームなんだ。他にも何人か同じチームで今、働いてて。山岸さんは新藤君と仲が良くて。まぁ、山岸さんは海外とやりとりするような部署にいるから本当だったら仲良くなったりしないんだけど・・・。新藤君繋がりで仲良くしてもらってる感じ。あの人、本当は凄い人なんだよ。」
うん、よく分からないけれども、山岸さんだけは、エリートなのかな。
藤木の口調からそんな印象を受けた。
しばし、仕事の話をふんふんと聞きながら思った。
頭の形状はおかしいけれども、頭の中身は普通だ。
それに、コミュニケーション能力もある。
意外にも話しが弾んで気が付けばもうすぐ最寄駅だった。
「ベスの家、駅から近いの?」
「自転車で5分位です。」
「そう。気を付けて帰りなよ。」
「大丈夫です。」
「山岸さんじゃないけど、また飲もうよ。」
「あー、いいすっね。」
そんな社交辞令なやり取りをして、電車から降りた。
昼間はまだまだ気温があがるけど、さすがに夜は過ごしやすい。
生温い風を感じながら、藤木の乗る電車を見送った。
また飲もうよって言いつつ、連絡先の交換とかしてねーべ。
社交辞令でそんなこと言うなら、藤木も山岸さんも連絡先くらい聞くのがマナーだべ。
最初のコメントを投稿しよう!