交響曲第9番

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藤木の家に行くときは、自転車には乗らないことにしてるべ。 いつも、帰りに家まで送ってきてくれるから。 慣れないヒールのパンプスで歩いてみる。 疲れるべ。 そんなにヒールが高いわけでもないのに。 そして、他人から見たらどこにでもいるアラサー女性にしか見えないことは重々承知の上だけど、自分の中ではここ数年、見たことがないくらいにイイ女になってるべ。 もしかしたら、電車の中でナンパされたりして。 1ピコメートルくらい、そんな気分だべ。 駅の改札まで来る間に、幾人かの人とすれ違った。 私を見る人は残念ながらいなかったべ。 この程度ではナンパされるほどじゃないことを痛感した。 1ピコメートルは期待値が高すぎたな。 1ナノメートルくらいの期待値にしておくべ。 寒いなぁと思いつつ、赤電車を待った。 そして、藤木が待っているであろう岡崎へ向かう。 赤電車の車窓から、乙川、岡崎公園、岡崎城が見えたら目的の東岡崎駅だ。 何回も見てるこの電車から見下ろす感じで見える景色が、素晴らしい。 春には、公園一帯が桜のピンク色に染まるんだべ。 そして、私は藤木の隣で頬を桜色に染めて、藤木の体に吸引!!! 春まで待てないから、今夜も吸引間違いなしだべ。
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