交響曲第9番

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いつも通りに北口からロータリーを見ると、この前と同じように横断歩道の近くに藤木のCX5を発見した。 小走りで向かおうとして、しまった、今日は走れないと自分の恰好を思い出したべ。 がに股で大股歩きなんてことにならないように、おしとやかで清楚な淑女に見えるように。 お口も、まさか吸引してやるべな感じに見えたら危険だからおちょぼ口をイメージだ。 横断歩道を渡りながら運転席に座る藤木を見た。 コートで隠れてるから、今日の私のお洒落は残念ながら見えてないだろうけど、いつもと違ってスカートでパンプスなことは見えてるようだ。 アレって顔をしてる。 いいべいいべ。 いつもスカートを履いてるようなお洒落意識の高い女の子が彼女だったら、ギャップ萌えを引き出すのにはこ汚い恰好をする必要があるけれども、いつもこ汚い恰好をしてる私がちょっとだけキレイ目な恰好になってもギャップ萌えだべ。 そして、私は藤木がギャップがなくても萌えるし、燃えたいし吸い付きたいべ。 青いCX5の助手席のドアを開けた。 「邪魔すんで~。」 「ぶはっ、せっかくスカートなのに中身はエリーだ。」 笑い出した藤木に気分を良くした。 ここで気分を良くするようなヤツだからダメなのか。 「今日は、エリザベスって呼んでもいいよ。」 「ぶはっ。じゃぁ、僕は何て呼んでもらおうか。」 「コージリアン3世。」 「ぶはっ、何それ。」 体を揺らす藤木を横目に、シートベルトを締めて、レッツゴーだべ。
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