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一旦、音楽が終わったところで藤木がマウスに手を伸ばした。
「もう、終わりなの?」
「第一楽章が終わったんだよ。エリーの知ってる有名な音が出てくるのはここまで。それに、僕も第一楽章しか聴いたことないし。それよりも、これ聴いてよ。」
藤木が私の後ろから手を伸ばして、マウスとキーボードをカチカチやりだした。
何だべ?
画面には
『トッカータとフーガ二単調』
と出ているべ。
私の顔の横にある藤木の顔が楽しそうに揺れている。
もしかして、藤木はめちゃくちゃ教養レベルが高いのでは・・・。
居間のDVDコレクションには推定人並みぐらいに、あっはんうっふんなDVDもあったのに。
「ほら、エリー、再生させるよ?」
「うん。」
自分の教養レベルが低すぎて藤木の趣味に合わせられないのではという嫌な種類のドキドキを感じながらも藤木に返事をした。
音を聞いた瞬間に笑ってしまったべ。
そして、藤木も私が笑ったのを見て肩を揺らして笑ってるべ。
「牛乳が飲みたくなった?」
後ろから聞いてくるべ。
「小学校のときの給食で、牛乳早飲み競争を同級生と繰り広げて興奮し過ぎて牛乳を鼻からだして鼻の奥が痛くなったことを思い出した。」
恥ずかしい過去を披露してみたら、盛大に笑ってる。
「あははっ。そんなことしてたの?あぁ、でもやりそうだよねー。」
肩を揺らして笑う藤木からの振動。
画面からは、音楽が鳴ってるっていうのに。
今の子供にこの音楽を聴かせても、鼻から牛乳って言わないかもしれないけど、私の世代はまだ鼻から牛乳世代だべ。
背中で笑う藤木の体温が温かい。
真面目に音楽を聴いていたはずなのに、結局、こんな風に二人で笑ってるんだべ。
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