交響曲第9番

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「まいう~。」 私が感想を漏らしたら、ふっと笑って嬉しそうな顔だべ。 コタツでプリン。 いつもの90度の定位置で微笑む藤木の横顔も好きだべ。 「今日のは特に自信作だからね。」 ふわっと笑う姿にムギュムギュだ。 プリンなんて、本当にそんなに言うほど好きじゃないけど、シンプルで素朴な味わいの藤木作のこのプリンは好きだ。 夢中で食べるってほどでもないけど、すぐに食べきってしまったべ。 「お替りあるよ?欲しい?」 「いや、いらない。そこまで好きじゃない。」 本音を言ったら悲しそうな顔をされたべ。 これじゃぁ、私が悪いヤツみたいじゃないかよ。 普通に考えたら、モノには限度があるべ。 プリンは1個でいいべ。 でも、藤木がせっかく作ってくれたんだし。 「夕飯、夕飯のデザートで食べたいかも。」 うん、我ながらいい答えを思いついたべ。 「じゃぁ、そうしようか。」 ホッとした。 好きな殿方に悲しい顔なんてされたくないべ。 「バニラビーンズとかさ、バニラエッセンスってあるでしょ?」 藤木に聞かれて頷いた。 お菓子マンなんですな。 そんなモノがいったいどうしたって言うんだよ。 「香水ってあるでしょ?」 これも頷いた。 「エリーの臭いみたいな香水とか芳香剤があったらいいと思うんだよね。」 ワッキーの臭いの香水なんてあったら嫌だべっ。 芳香剤もいらねーべっ。 絶句。 「毎日、絶対に興奮するし、やる気がでるからさ。ほら、匂いって五感の中で一番記憶に結びついてるって言うでしょ。」 記憶に結びついてる臭いがワッキー。 そして、それを嗅ぎたい藤木。 「変な趣味だね。」 「そう?僕、考えたんだけど、きっと僕だけじゃないよ。好きな人の体臭が大好きな人。エリーはもっと自分の匂いに自信を持った方がいいよ。」 返す言葉が思い浮かばないべ。 忌み嫌われてワキガは勘弁とまで言われたことがあるのに。
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