交響曲第9番

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外はすでに真っ暗。 12月は、日暮が早い。 ぶるっと体が震えそうだと思っていたら、藤木の手が私の手を掴み、そのまま私のコートのポケットへ。 間違ってるべ。 笑ったし。 「普通、ここはコージーのコートのポケットじゃん。」 「いいじゃん。そのコート、可愛いし肌触りもいいし。」 ニコッと笑って、ゆっくりと歩き出した。 藤木の着てる完全防寒なダウンジャケットの方が絶対にぬくといと思うけど、藤木の手の温もりがあるからヨシとしよう。 住宅街の中を歩いて行く藤木。 どこに行くんだべ? 坂道を登ってるべ? しばらくしたら、目的の建物が出現だ。 ホールだね。 慣れた様子で、ホールの入口に連れて行かれてる。 「あっ、やばい。時間だ。」 時計を見て、藤木が言った。 私の手を引っ張るように早歩きしてるけど、ときどきこっちを振り返って見てくるべ。 なんか、いいべ。 ちゃんと、女の子として扱われてる実感がある。 人のほとんどいない受付で、チケットを出して切ってもらって、急いでホールの中に入った。 外観からは想像がつかない大きさのホールだべ。 もっとしょぼいホールを想定していたのに、大きいじゃん。 「ええと、席は・・・。もっと前みたいだ。」 チケットに書かれた席を探して藤木が歩く。 キョロキョロしながら歩く藤木の後ろについて行く。
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