交響曲第9番

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「浩二。」 ふらついてバランスを崩した私の耳に届いたオジ様ボイス。 藤木の背中の向こう側から聞こえてきたべ。 「あっ、ちょっと待って。」 藤木がそう言った声も聞こえてきたべ。 そして、私は崩れた姿勢を元の隊形に集まれするべく立ち上がっていた。 「ごめんね、大丈夫だった。」 振り返った藤木からかけられた言葉に笑った。 「大丈夫だった。ちょっといつもよりも足が長くてつっかえただけだよ。」 「ふっ、そっか。」 わざと、藤木の目に入るように片足を上げて、今日はヒールだぞとアピッたらいつものように笑ったべ。 それから、一瞬、ぎこちなさそうにした後、また前方を向いた。 「久しぶりだね。父さんと母さんも来てたんだ。」 「あぁ、この前、千恵からチケットを貰ったから。」 バクバクと高鳴る心臓の音。 父さんと母さんのキーワードが聞こえたべ。 藤木の向こう側にいらっしゃるのは、藤木のブラのせいでついかっとなって藤木を勘当してしまって、解決の糸口が迷宮入りした親子じゃ、あ~りませんか~。 「そちらは?」 お上品な女性の声。 これは、先日、千恵さんから情報をもらった酵素な藤木マミーの声。 プロテインな藤木パピーと酵素な藤木マミーが藤木の向こう側にいらっしゃるってか!? 良かった、こ汚い恰好じゃなくて、自分比でいうところの余所行きな恰好で。
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