交響曲第9番

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なんとなく、居心地の悪いまま4人で歩き出してしまったべ。 聞けば藤木の実家と藤木が現在住んでるアパートは割と近くらしくて、利用するバス停も同じ。 家出した割には、近いとこに住んでる親孝行息子だ。 居心地の悪い空気を一生懸命にとりなす藤木マミーが健気だ。 私も聞かれたことには精一杯、愛想良く答えてるべ。 藤木とどこで出会ったかとか。 合コンですとは言い難いから、知恵を絞って大学時代の先輩が藤木さんの会社の人と知り合いでそのご縁で。 と、合コンをまわりくどくオブラートに包んでみたべ。 「二人は結婚するの?」 うっ。 そりゃ、適齢期だしできればしたいし、私の中で藤木へのプロポーズ大作戦はいつか決行しようと思ってるべ。 だけど、そこをズバリと聞いてくるって、オバサン根性丸出しだべっ!!! バス停でバスを待ちながらピュー―――っと冷たい風が4人の間を吹いた気がした。 「言ってあるのか?」 一瞬の間の後に、藤木パピーの声が聞こえた。 あっ、ブラのことだ。 ピンと来た。 「うん。」 ちらっと藤木を見たら、藤木もこっちを向いていた。 はにかむってこんな顔か。 可愛い顔をして、ちょっと恥ずかしそうな感じだ。 親の前でそんな可愛い顔、するんじゃないべ。 私だけの前でしてよ。 そんな気持ちになったところで、ナイスタイミングでバスがやってきた。
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