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「ねー、いいじゃん、一緒に入ろ?」
可愛いぞ、小首を傾げて聞いてくるのは、反則だ。
言葉に詰まった。
「何対何ぐらい?気持ち的に。」
「6対4でグラグラしてる。」
「どっちが6でどっちが4?」
ニコニコしながら楽しそうに、それでいて真っ直ぐに逃がさないって感じの顔だ。
ちょっと男を感じてドキドキしてるべ。
「一緒に入るが6。」
「ふーん、じゃぁ一緒に入っちゃおうよ。僕もエリーも体が冷えてるしさ。時間の短縮になるし、一緒にいられる時間が増えるよ?」
ぐっ。
藤木は、普段こうやって国内営業部で働いてるのか。
グイグイ押して押して押しまくる、押しの強い営業なんてしてないだろうと思っていたら、なるほど理詰めで合理性を説くタイプだったんだ。
「返事してくれないんだ、残念。エリーが風邪をひくといけないから先にお風呂、どうぞ?」
返事に詰まっていたら、今度は自分が引くってか。
悪い気がすんべ。
藤木の体だって私と同じように冷えてるし。
「コージーが先に入っていいよ?」
「やっぱり、一緒に入ろうよ。」
好きな人の笑顔は破壊力があるべ。
ついつい、うんと頷いてしまった。
そしたら、もっといい顔が出現したべ。
「僕の家のお風呂、広くないからくっついて入れるよ?」
広くないことはすでに知ってるべ。
それを、短所ではなくて長所にするところも好きだべ。
暖かくなってきた部屋の中で、藤木がコートを脱ぎだした。
私も真似して脱いでみた。
「ここで服も脱いじゃう?走ってお風呂場まで行ったら寒くないよ?」
「コージーだけ、どうぞ。全裸でお風呂場まで走るなんて恥ずかしいことしないよ。」
「プッ。エリーならするかと思ったのになぁ。」
ケラケラっと笑った顔。
私って人間は藤木にそんな風に見られているのか。
間違ってない気がするべ。
そんな人間か。
でも、さすがに全裸で走るってのはね。
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