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人生には、とんでもなく忙しい時期がある。
誰の名言か知ってるべか?
母親の名言。
フルタイムで働きながら子育てをしていた時期のことを指してそう言った。
9時に出社するために、私を保育園の延長保育に早朝からぶちこみ、電車に乗って名古屋駅。
フルタイムで働き、保育園の延長保育に夕方迎えに行ってから帰宅。
大急ぎでご飯を作って食べさせて、私と一緒に寝落ちして夜中に洗濯機をまわしたり、早朝に洗濯機をまわしたり。
とにかく、どうやってその時期を過ごしていたのか記憶がないと。
気が付いたときには、私がちょっと大きくなっていたと笑っていたべ。
そこまでの忙しさじゃないけど。
気忙しいのが毎年12月。
世間様がざわざわしてるからっていうのもあるし、仕事の方もどういうわけかバタバタしてしまって、毎日定時で帰るのを常としている山田さんや小鳥遊さんまで残業していたり。
「トミー、悪いけど残業できる?」
山田さんからのご指名に、本当は藤木と会う予定が・・・と一瞬思うものの
「大丈夫です。」
と答えてしまうのだ。
そして、こそこそと立ち上がり
「先にお手洗いにだけ行って参りまーす。」
とバッグを握る。
それから藤木に電話をした。
「もしもし、エリー?仕事終わった?」
弾んだ声の藤木はきっと仕事が終わってるんだべ。
ひょっとしたらすでに待ち合わせ場所だったりして。
申し訳ない気持ちが湧いてきた。
「あのね、仕事、残業を頼まれちゃって。」
「えっ。あっ、そっか。うん、そうだよね。そういうこともあるよね。」
最初こそ、戸惑ったような声を出したものの、すぐに納得してくれたようだ。
「頑張ってね。そうだ、終わったら教えて。」
「う?うん、分かった。」
手短に電話を終わらせて、また自席についた。
早く帰りたいのは皆一緒。
山田さんだって小鳥遊さんだって、他の人だって。
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