走るよ 師走

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「すみません、瓶ビールとグラス2個。それと土手煮とおでんと串カツと焼き鳥とネギマと肉じゃが下さい。」 いつかみたいに、勝手に大量注文。 そうだ、宇宙一美味しい焼き肉に連れて行ってくれた時のアンジーの注文方法と同じだと思ったんだべ。 前にここに来たときに。 ふっと、思い出したらおかしくなってきた。 確か、あの日、酔っ払って藤木が私の自宅まで送ってくれたことさえ忘れて、お礼がしたいって言ったらここがいいと藤木が言いだしたんだった。 「エリー、いいこと教えてあげようか?」 「何?」 「思い出し笑いする人ってエロいんだよ。」 嬉しそうに私を見て言う顔。 その顔にまた笑った。 「間違ってないから大丈夫。エロくて何が悪い?子孫繁栄のためには必要じゃん。」 「ぶはっ、そういう返事なんだ。あははははっ。」 肩を揺すって笑う藤木。 カウンター席だけの狭いお店だからそうやって笑うと藤木の肩や腕が私に触れる。 ほぼ、オジサンで形成されてるこのお店の客層の中で私と藤木は明らかに浮いてるけれども、ワイワイガヤガヤな雰囲気の中ではドンピシャとはまってるべ。 次々と目の前に並べられる藤木の頼んだ食べ物たち。 グラスにお互いにお酌をして、小さくグラスを当てて乾杯したべ。 「一緒に飲むのって久しぶりだよね?」 「そうだっけ?ちょくちょく飲んでる気がするけど?」 藤木に聞かれて首を傾げた。 「ちょくちょく飲んでるけど、ここのところ飲んでないよ。」 言われてみればそんな気もする。 「そうだったかも。」
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