3464人が本棚に入れています
本棚に追加
「こら、エリー、まっすぐに歩きな。」
腕を掴まれて、コート越しなんだけど藤木の手を感じてニヤニヤだ。
「わざとに決まってるじゃん。千鳥足の練習、はふっ。」
居酒屋 名古屋を出て良い気分でフラフラしていたら、掴まれた腕ごと引き寄せられた。
そして、そのまま腰を抱かれて地下街を歩く。
「僕も酔っ払い~。いつもはこんなことしないけど~。」
ふわふわっとした気持ちの浮遊感を藤木も感じているのか、確かにいつもの藤木なら絶対にしないような感じだべ。
「エロいな。中年不倫のアベックみたいだ、ふはははっ。」
私の笑い声が藤木の体に共鳴してる気がするべ。
近い近い近い。
いつもよりもずっと近い。
「酔っ払いついでにここでキスしちゃおっか?」
およそ藤木らしからぬ発言にまた笑った。
「ダメだって。だったら駅裏のラブホに行った方がいいって。」
「じゃ、次の休みまで我慢する。さっさと帰らないとね。」
腰を抱いて歩いていたはずの手が外され、いつもの通りに手を繋がれて歩くスタイルに変わった。
「ちぇっ。」
「ふっ、何?そんなに行きたかったの?ラブホ。」
頭上から降りてくる笑い混じりの声。
「大事なのはラブホじゃなくて、そこで致される行為です!」
「ふはっ、酔っ払い。」
酔っ払い認定されてるけど、そうだべ?
せっかくラブホに行ったら普通、するべ?
だってそれが目的だべ?
一緒にいられるだけで~とか二人きりになりたい~とか、そんなの温いべっ!!!
二人きりで密室にいたらやっぱりゴールまでひた走るべっ。
「フォーーーーーーーー!!!」
「酔っ払い、恥ずかしいからやめなさい。」
「ふぉーーーーい!アイアイサー。」
「ふはっ、アイアイサー。」
気分が良いべ。
酔っ払い万歳だべっ。
「どっちが」
藤木が言葉を発した瞬間にダッシュしたべ。
次の言葉が分かったから。
「こら、エリー、ずるいぞっ!!!」
ずるいと言われてもいいべ。
人が少なくなってる地下街を全力疾走。
「フォーーーーーーー!!!」
後ろから藤木の靴音。
目の前の改札。
通過してやるべと思ってバッグに片手を突っ込んだところで、掴まえられた。
「はぁっ、はぁっ。酔っ払ってないじゃん。」
笑う藤木に私も笑う。
「そっちもね。」
「チョー気持ちいぃっ、ふふふっ。」
「しかも、叫ばないんだっ、はははっ。」
最初のコメントを投稿しよう!