走るよ 師走

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改札前でしばし微笑みあって、それから二人で改札を通り抜けたべ。 階段を降りつつ、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったなと思う。 改札を降りれば、特急電車がホームにやってきたところだ。 「アレに乗れば早く帰れるんでしょ?」 「ちょっとの差だし、急行だったらエリーと一緒に帰れるよ。」 「ふふふっ。」 こっちを見てる視線を感じる。 ほら、見上げれば見てる。 「何?」 「ん?好きだなって思って見てた。」 ウホッ。 普通にそういうことをサラッと言えるってか。 照れるべ。 「その顔も僕のツボ。可愛い。」 ウホホホホホ。 ますます照れるべ。 もう、何も言えましぇん。 「僕がアグレッシブにいくと絵里の腰が引けるとこも好き。」 ウホホホホホホホホホホ。 アグレッシブ過ぎだってば。 何も言えましぇんの2乗だべ。 「誰にも見せたくないくらい、可愛い顔してるよ、今。ほら、こっち来て。」 ホームの壁際に引っ張られて、そこで藤木の腕の中に閉じ込められた。 恥ずかしいぃ!!! 何も言えましぇんの2乗どころの騒ぎじゃないべ。 サインコサインタンジェントでルートでベクトルで微分積分だべ。 つまり、全部赤点ぶっこいたくらいに無理無理無理だべっ。 「やっぱり、酔っ払ったかなぁ。走ったせいでアルコールがまわったかも、ふははははっ。」 閉じ込められた腕の中で、すぐ近くに感じる藤木の声に息遣いに匂い。 全部が私を刺激してくるべ。 全部好きだべ。 触りたい。 酔っ払いは欲求に素直な生き物だ。 普段、常識的な藤木でさえ駅のホームでバカップルな暴挙に出てる。 ここで多少私が暴挙に出たところで、お咎めなしだべ。 さわさわ。 さわさわ。 さわさわ。 ガシっと掴まれた腕。 「もうっ、すぐにエリーはそういうことをする!!!」 解放された体。 「いーじゃん。立ってたくせにっ!!!」 絶句した後に、ニヤッと笑って、唇を藤木の唇で塞がれた。 わーーーーーーーーーーっ!!! ここ、駅、ホーム!!!
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