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「あっ、梅だって、美味しそう。」
美味しそうを言い終わる前に藤木の手が、試食の箱とトングに伸びてる。
ここに来たいと言ったのは私だったけれども、藤木の方が楽しみだした様子が可愛いべ。
ほらって顔をして手を出すように促される。
しゃりっとした歯触りと梅の刺激的な風味。
もちろん。
「まいう~。」
今度はさっきの指摘を踏まえて普通のトーンで。
藤木も嬉しそうに
「まいう~。」
と笑う。
わさびや梅は確かに刺激的で美味しいけど、普通のスーパーにもあるべ?
もっと変り種はない物か。
順番にいくつかの試食を試していく。
こんなの美味しいのか?
と思いつつ手をのばしたゴボウのせんべいが美味しくてびっくりした。
そして、普通に
「これ、美味しい。」
と言ってしまったら藤木が笑い出した。
「本当に美味しいときはそういうリアクションだよね、エリー。」
そう言って笑う姿を見て、いやいや、確かにそうかもしれないけど、でも・・・。
複雑な気持ちになった。
そうか、こっちが本当の姿なのか。
そして、私は藤木に本当の姿も見せてるのか。
真っ黒のせんべいに目がいったら、そこにはいかすみの文字。
見た目からして買われないだろうという感じ。
試食できなかったら、きっと買われないような見た目だべ。
「すごい色だね、これ。」
藤木も同じことを思ったらしい。
「試食してみる?」
「勇気がいるよね。」
私達のやり取りを知らない隣のアベックがキャーキャー言いながらせんべいに手を伸ばしてる。
「けっこう美味しいよー。」
「あっ、ホントだ。」
そのやり取りを聞いてから、私もトングに手を伸ばした。
そして、隣のアベックが消えたのを確認してアベックの女の子みたいなキャピキャピした声で言ってみた。
「けっこう美味しいよー。」
ニヤッと笑った藤木が
「あっ、ホントだ。」
とアベックの男の子の真似をしたけど、素と変わらなかったから、そこにもウケて笑ったべ。
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