赤い実 はじけた

6/30
前へ
/539ページ
次へ
いつものように、イッシーはキャラメルマキアートを、私はホットのカフェラテを持って空いてる席に座った。 明日のことでも話そうかと思いつつ、ひとまず最初のひと口をお口に含んでいたらイッシーからの先制パンチが飛んできた。 「彼氏ができた。山根。」 「ブハッ!!!」 盛大にむせた。 だって、山根!!! イッシーの過去の男たちからは想像もできないべっ。 「ごめっ。かかったべ。ワッキータオルで良ければ」 「いらんわー!!!」 使うかと続けようと思ったらイッシーの声が被さった。 だな。 他人のワッキータオルと使うくらいなら、自分のワッキータオルだな。 つーか、ワッキータオルでなくて普通のハンカチに決まってるよな。 先月よりも髪の毛が伸びてボサってるはずなのに、輝いてみえるぞ。 珍しく髪の毛がハーフアップにアレンジされてるのも、彼氏ができてちょっと雰囲気変わった感じなのか? いや、それよりも山根だべっ。 この一カ月の間にいったい何があったんだべっ。 聞き出さなくては。 「い、いつから付き合ってんべ?」 「今週。」 ウホっ。 できたてほやほやのカップルってか!? 「ヤッたか?」 一応、声のトーンを 落として聞いてみたけど睨まれた。 「まだそこまで深イイ仲じゃないって。」 うん、なんかホッとした。 25歳くらいでモヒカン男と別れて以来、彼氏を作ってこなかったイッシー。 時を同じくして、彼氏にワッキー臭をつけて別れた私。 お互いに3年もブランクがあんべ。 って言うか、先を越された焦燥感を心のどこかで感じてるべ。 一緒にこうやって語らう時間もこれから先、少なくなるのかなとか。 イッシーにだけ彼氏ができて、自分は一人なのかなとか。
/539ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3464人が本棚に入れています
本棚に追加