赤い実 はじけた

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「で、どうしてそんな仲になったんだべ?」 一応、恋バナは栄養源だし聞いとくのがマナーだしな。 イッシーの話は有りそうで無さそうで有りそうな話だ。 これは偶然ではない、必然だってやつだ。 あの飲み会の日は山根と二人で本当に普通に健全に帰ったらしい。 そこそこ話はするし、お互い好意を持ったかどうかも不明なレベルだったらしい。 それからしばらくした頃に、近鉄の地下の大判焼きの店に並ぶ山根を会社帰りのイッシーが見つけて声をかけたと。 「大判焼き!?あそこの店か!?あそこの大判焼きは美味いべ?山根は誰に買っていくとこだったんだ?」 「自分用、て言ってた。」 楽しそうに思い出し笑いをするイッシーが眩しいべ。 二人の始まりは大判焼きなのか。 くぅっ。 ショートケーキやガトーショコラではなく、あんこなところがイッシーと山根にぴったりだ。 あんこという字を一文字替えたら・・・飲んでねーときにこれを言ったら女子として危険だべっ。 自制しろ、ベス!!! 自分用に買った大判焼きは箱入りで5個。 駅のホームのベンチで二人並んで1個ずつ食べたらしい。 おいおい、家に帰ってからにしろって。 で、残った3個をイッシーにくれたらしい。 山根、イッシーのこと、普通に好きやろっ。 自分用に買ったくせして、4個も献上してるって。 「でっ?どうやって赤い実がはじけたんだ?」 イッシーはこの時点ではじけたのか、はじけてねーのか。 いつもなら、絶対に下品な笑みを口元に浮かべるはずなのに、柔らかくふふっと笑ったイッシー。 くうっ。 彼氏持ちの余裕ってやつか。 「そこで連絡先をお互いに交換してお礼に飲みに行きましょうってなって。」 ほうほう。 なるほど。 これが大人の恋愛か。 参考にしておこう。 恋愛の作法なんて忘れてしまったさ。
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