赤い実 はじけた

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山岸さんを先頭に歩き出したけれども、どんなお店に連れて行かれるのかドキドキしていた。 正直、イッシーが山根と行ったみたいな串カツ屋とかこの前のようなエンタメ系な飲み屋ならオッケーだけど、ビルの高層階に位置するようなオサレで値段も高いようなとこに連れて行かれたらビビるべ。 そんなところに飲みに行った経験がないからなぁ。 チェーン店のやっすい飲み屋とか・・・ジモティ御用達のやっすい飲み屋とか・・・。 オサレと無縁の生活してたから・・・。 キラキラ輝いて見える山岸さんの後姿を見て、 本当は俺達と仲良くなるような人じゃなくて、凄い人なんだよ、山岸さんって と、いつか藤木が言ってた言葉が蘇ってきた。 なんとなく、無言で歩きつつ後ろを歩くイッシーと山根をチラ見すると初々しく話してるし。 やっぱりなんか、場違いなとこにいるみたいな気にならなくもねーぞ。 「ベス、飲まないと話せないの?」 隣を歩く藤木に話しかけられ、ちょっと笑って聞かれて、困った。 前を歩く山岸さんがキラキラして見えたけど、藤木の声にもなぜかドキっとしたべ。 心のうちを見透かされたような気が・・・。 「どこまで飲みに行くんでしょうかね。」 話しかけてくれたんだから、会話を続けないと。 サービス精神旺盛なんすよ、私。 誰にも負けない美貌も頭脳もないし、人より秀でてるのはワッキーの臭いの強さだけだし、秀でてないって話だし。 「あー。なんかバルとかって言ってた。お洒落なとこだったらどうしようね、俺、こんな頭だし。」 「ぶはっ。自分でも頭が危険だと思ってるってことですか。」 ヤラレタ。 酔っ払ってなくても面白いじゃないか、藤木。 「飴ちゃんいる?」 ん? 飴ちゃん? 「何味ですか?」 「何が出てくるかな。3個くらい仕込んでおいたけど。」 仕込むって、ポケットから出すんじゃねーべか。 こっちを向いて笑いながら、ヘルメット頭に手を差し入れて・・・。 ヤバイ、真面目な顔してそこに飴ちゃんを仕込んでる様子を想像したら腹筋がプルプルくんべ。 笑っていいのか。 笑っていいのか。 下を向くしかない。
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