赤い実 はじけた

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トイレの前には、人が一人。 なんかいつぞやを彷彿とさせる展開に一人笑った。 「前回は私が先だったから今夜は藤木が先でどうぞ。」 「いやいや、ベスが先で微香空間にしといてくれていいよ。」 藤木の使った微香空間の言葉に笑った。 オブラートに包んでるみたいな感じだ。 気を遣ってくれてるのか、それとも前回の飲み会のときに私が使った言葉を覚えていたのか。 どっちにしても、キュンときた。 人が一人出てきて、前の人がお手洗いに入って行く。 微妙な二人きりの演出に困るって言うか、なんか照れる。 意識しないはずがないって話だ。 「ベスは日曜日は何するの?」 「あー、日曜日はワキ休みだな。」 「ワキ休みって何だ、それ。」 「だからさぁ、平日は戦闘モードで臭い対策をいろいろすんべ?ワキにクリーム塗ったりローション塗ったりスプレー吹きかけたり、その日の状態にもよるけど、いろいろすんべ。日曜日は何もせずに自然体のままに放置しておくってことだな。だから基本的には引きこもってる。」 私の話を聞きながら笑う藤木。 「休肝日みたいなもんってわけか。」 「そうそう。休日モード。」 「ワキ休みなんて言葉、初めて聞いた。」 「これからジワジワとメジャーな言葉になるかもしれないな。デオドラント商品も昔に比べたら凄い充実してるし。」 「そっか。」 前の人が出てきたから、次は私が。 扉の向こう側に藤木がいると思うとドキドキだけど、用を足したら取りあえずタオルでワキ汗を拭って塗り塗りしてと。 それから、衣類用の消臭スプレーでシュッシュだ。 ・・・大丈夫かな。 意気揚揚とトイレを出たら藤木に聞かれた。 「水、流す音しなかった気がするけどベス、出してないの?」 ウホッ。 「出した、忘れた、ウェイト。ウェイト。ストッピング。だるまさんが転んだ!!!」 藤木を見たまま、逆戻り。 ジャーと水を流して、ふうっとひと息。 チョー恥ずかしいぃ!!!
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