赤い実 はじけた

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藤木が私の腕を掴んだまま連れて行った車両の真ん中辺りで、掴んだままの手を躊躇なく上に引っ張って吊り革に掴まらせた。 ワキが・・・。 「大丈夫だって。」 ふっと笑った顔に、やっぱりドキドキして目を逸らした。 これだけ、ワキが気になるのに、そこをあっけなく 大丈夫 そう言って笑うって、ずるいべ。 「山根君とイッシーが付き合ってるって聞いた?」 藤木の言葉に頷いて答えた。 「昨日、イッシーから聞いた。」 「山根君のコンプレックス、身長なんだよ。山根君の体臭はそれほど強くないけどさ、本人は3大コンプレックスとかって言っててな。」 身長・体臭。 もう一つは何だ? 「もう一つは何?」 「学歴。僕たちの会社にいる人ってけっこう高学歴の人が多くてさ。山根君は大卒だけど国公立卒でも難関私大卒でもないからさ。」 「学歴があっても仕事ができなきゃ意味がないと思うけどな。」 「そうだよ。山根君は普通に仕事してるし、本人が思うほどコンプレックスに思うようなものでもないよ。誰にだってコンプレックスってあるでしょ。」 まぁ、誰にでもコンプレックスの一つや二つはあるのかもしれない。 程度の差、こそあれ。 「イッシーも身長が高いの、コンプレックスだな。本人165センチって言い張ってるけどさ。」 「ぷっ、僕とそんなに変わらないのに165センチって言い張ってるのか。きっと170センチ近いな、じゃぁ。可愛いウソだなぁ。」 藤木が笑った。 可愛いウソだなぁって、イッシーいいなぁ、可愛いって言ってもらえて。 ・・・おいっ。 赤い実がはじけたからって、その気になるなよ、ベス。 藤木が好きになってくれるかどうかなんて分からないし、たまにこうやって飲んで楽しんで、その関係のまま仲を深めていくのが得策だべ。
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