ビューティーサロン A&J

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「よし、競争だ!!!負けたら罰ゲームなっ。」 まるで昨夜の藤木のようなことを言って走り出したのは山岸さんだった。 駅前のロータリーをぐるっとまわって停まった藤木の車まで走ったら、さながら運動会の徒競走だ。 こういうとき、私もイッシーも 「いやだぁっ。」 なんて可愛い声でクスクス笑うって芸当はできないタイプだ。 負けるわけにはいかねーべ、おらおらおらおらっ!!! っと走り出すタイプなのだ。 しかも、イッシーは早い。 山岸さんの後を追うようにスタートを切った私とイッシーを追いかける山根の構図。 やっぱり、スタートダッシュは重要だべ。 タクシーが並ぶ横を風を切って走り抜ける大人が4人。 きっと、みんな何事かと思ったに違いない。 コーナーにさしかかったところでイッシーが山岸さんを差すか!!! その後ろを懸命に追う私。 後ろの山根のことは分からないけれども、近くに息遣いを感じないってことは、もうちょっと後ろを走ってるに違いない。 コーナーを曲がりきって直線になったところで一気にイッシーが山岸さんを追いぬいた。 すっげー。 はぁっ、はぁっ、はぁっ。 はぁっ、はぁっ、はぁっ。 はぁっ、はぁっ、はぁっ。 はぁっ、はぁっ、はぁっ。 山根も藤木の車の横までやって来て、みんな息があがってる。 「はぁっ、イッシー、相変わらず、はえーべっ。」 ニヤッと笑ったイッシー。 「スニーカーだからなっ。パンプスはいてたら無理だなっ。」 「ベスも速いって。やっぱり足の長さが足りないと遅いのかなぁ~。」 おっとりしながら言う山根に笑った。 「そう足の長さなんて変わらないって。3センチくらいしか低くないよね?」 微妙な顔をされてしまった。 あっ・・・身長の話はコンプレックスで禁句だったか? 「・・・いや、本当はもっと僕、背が低いよ。いつもシークレットシューズだから。」 ウホッ。 まさかのシークレットシューズ!?
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