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「後ろに3人、前に一人で乗って。あっ、ベスが助手席で。」
言われるがままに、助手席に乗り込みシートベルトを着用した。
こういう車に乗ったの、初めてだ。
清水のヤリチン野郎のことなんて忘れて、藤木の車を堪能しよう。
消えろ、清水のヤリチン野郎。
って、消えるわけないか。
痛い思い出だし。
うん、初めて付き合って深イイ関係になった相手だしな。
「ベス、どうかした?」
・・・どうかしてる。
藤木が輝いて見えたし、藤木の声にキュンとした。
昨日の夜の赤い実がはじけたのは、酔っ払いの戯言でも酔った勢いでも、前後不覚になっていたわけでもないってことだな。
「どーもしてない。でっかい車だね。」
「いいでしょー。」
どうやら、藤木の中で車を褒められるのは嬉しい行為のようだ。
その後、車のことはよく分からない私が適当に相槌を打ってるにも関わらず、エンジンがミッションオートマでとかスカイアクティブシステム搭載で・・・と話し出した。
藤木の話すウンチクもつまらなくはないけれども窓の外に見えるお城の方が気になった。
電車からも見えたし。
「あれって、岡崎城?まわりは公園なの?川?」
お城の周りに木が生えてるのはどこもそうだと思うけれども、橋を渡る車の下を流れる川がお城の方まで続いてる。
「そうそう、岡崎城。川は乙川って言われてて岡崎城は岡崎公園の中にあるよ。何?好きなの?」
好きなの?
が、お城、もしくは歴史を指してることくらい分からないわけじゃないけど、ドキっとした。
この胸に感じる甘い疼きは、危険な兆候だ。
何年かぶりに危険な兆候を察知してる。
平常心、平常心。
「いや、どうだろうかな。徳川家康よりも豊臣秀吉、いや織田信長かな。」
「あ~、そっかー。僕は岡崎出身だから徳川家康かな。」
歴史の話も深くされると困る程度にしか知識がない。
ヤバイ。
このまま、徳川家康についての深い知識を披露されたらきっと眠る。
まだ、さっきの車の話の方がマシだったか。
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