ビューティーサロン A&J

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ゆったりとした広さの店内にふさわしい巨大なソファー。 ここで社長が会議できそうなくらい広い。 「そうだ、たこ焼き食べましょう。お茶入れてくるから待ってて。」 何しに来たんだっけ。 そうだ、髪の毛を切りに来たはずなのに。 すっかり忘れていたし、アンジーも忘れてそうな勢いだったけれどもアンジーの背中を笑いながら見つめていたジェームズが髪型カタログをテーブルの上に何冊も置いた。 「まぁ、浩ちゃんは俺のおすすめでいいよな。」 「えっ、だって、またおかしな頭にされたら嫌だってば。」 「おかしな頭になったから仲良くなれたんだろ?」 私とイッシーと山根が座るソファーをさらっと流し目で見て勝ち誇った顔をしたジェームズにうっと詰まる藤木。 そうだべ、社会人にかなりの冒険な頭をさせる面白い人が見たくて来たんだべ。 熊のような見た目だけど、あれだ、大きな動物の方が普段は温厚ってのを体現したみたいな感じ。 ちっせー動物がキャンキャン騒ぐのとは違う。 そんな大きさを感じるよ、ジェームズ。 「ベス、髪型どーするの?」 隣で山根と熱心にカタログを覗くイッシーに聞かれ私も手元のカタログを見た。 分からない。 正直、よく分からない。 「切りたいけど、首の後ろのところにおかしな渦巻があるのと頭頂部の分け目のところに渦巻が二つあるからどーすっかな。」 のびのびサロン湿布な感じに伸びてしまって、今や私の髪の毛は肩甲骨よりも長い。 巻いて巻いてゴージャスになんて思わないし、手入れが面倒だから切りたいんだ。 が、渦巻のせいで切ってもおかしな方向に襟足が跳ねるんだ、これが。 「紗那ちゃんは、どんな感じにするの?」 いちゃこらすんじゃねーべ、山根。 思っただけだ。 「・・・これみたいになりたい。」 イッシーが指差した髪型は、ふんわりとしたマッシュルームヘアーだ。 多分、イッシーに似合う。 ボーイッシュなイメージで似合うと思う。
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