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藤木と山岸さんの会話を聞きながらときどきイッシーの髪型や山根の髪型を盗み見て自分の髪型も変わったんだよなぁと思いつつ、さっき考え付いた藤木の秘密についてもう一度、考えてみた。
テレビや雑誌で見るセクシュアルマイノリティの方々のような独特の雰囲気は感じない。
でも、セクシュアルマイノリティの方々だって、人口の3%から5%くらいいらっしゃると新聞の記事で読んだことがあるべ。
だとしたら、私が気が付いてないだけで、けっこうたくさんの人が当てはまることになる。
100人に5人。
少ない方だとしても100人に3人。
小学校の1クラスに1人。
私のいる会社の部署に1人。
藤木の会社だったら大企業だし、すごくたくさんの人がそうだったとしてもおかしくないべ。
「ベス、どうした?真剣な顔して。」
藤木の笑顔は、いろいろな葛藤や苦労を乗り越えての笑顔だったりして。
藤木が私の臭いを大丈夫って言ったのは、お前の臭いなんて人口の10%だぞ、俺よりマシだ。
そういう勇気づけだったりして。
藤木、良いやつだ。
「いや、藤木の家、いいなと思って。風情があるなって思った。庭付きだし、ある意味テラハウスだよね?」
丁度藤木の座るソファーの後ろのガラスのドア越しに見えるボロい長屋を指差して考えていたこととは全く違うことを言って誤魔化してみた。
藤木が笑った。
「あれをテラハウスと呼ぶベスの感性に感動した。」
そう言いながら、やけにすっきりして淋しくなってしまった頭を揺らして目を細めて笑う藤木。
やっぱりあの優しい笑顔の裏には、きっと人には言えない秘密の苦労があってこそなのかもしれない。
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