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「ほら、シンデレラ、王子様は後よ。
食べ物がなくなったらどうするの?」
隣の豚が、いや、継母達がシンデレラに無理矢理肉の乗った皿を渡す。
シンデレラは心の底から思った。
こんな人達と親子と思われたくないと。
余りの異質な継母達が注目を集めたお陰で、王子様の視線はシンデレラを含めた4人に集まっていた。
「食事はお口に合うでしょうか?」
場の雰囲気を察してか、王子様がシンデレラに話し掛けてきた。
やはり王子様もシンデレラを継母達とセットで見ていた様だ。
「ブヒーブヒー」
「あまりにも美味しくて……何と言うか……すみません。」
シンデレラは王子様と会話をする事よりも、豚丸出しの継母達が恥ずかしくて逃げたい気持ちでいっぱいだった。
今が12時なら走って逃げていたわ。
足にはガラスの靴の替わりの継母のローヒール。
しかも大きさが合わないから、靴の先にティッシュを詰めて無理矢理履いている物だ。
こんな靴じゃ、脱げても拾いに戻らなきゃならないし……シンデレラは王子様と視線を合わせる事ができなくて、俯いてしまった。
「ちょうど私もお腹が空いていたのです。
一緒に召し上がりませんか?」
「一緒に踊りましょう」ではなかったものの、シンデレラと王子様は一緒に食事を取り、楽しい時間を過ごした。
「貴方のお名前は?」
王子様から尋ねられたシンデレラは息を飲んだ。
確か、このセリフの後に魔法が解けたんだ。
「シンデレラよ!
私の娘のシンデレラですよ!」
隣の豚が余計な言葉を挟む。
「シンデレラ、貴方の様な素敵な人に初めて会いました。
ぜひ私と結婚して下さい。」
「はい、至らない娘ではありますが、よろしくお願いします!」
ああ、また豚が余計な言葉を!
こんなご飯をたらふく食べている豚の娘が素敵な訳ないじゃない!
この王子様、絶対おかしいわ。
それに、私は全世界の女性の憧れ、シンデレラよ?
何でこんな踊りもしない舞踏会で満足しなきゃならないの?
世界中の女性からブーイングの嵐に決まってるわ!
シンデレラが断ろうと口を開いた時には、楽団がファンファーレを掻き鳴らし、会場の全ての人が拍手喝采で王子様とシンデレラを祝福していた。
こうしてシンデレラは、王子様と幸せな結婚をしたのでした。
Fin
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