時間(トキ)と守りし者の名は

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むかし、まだ数がわからないセカイのころの。 たくさんのシナモノを売り買う中で。 ひときわ、珍しく売られていたのは。 時間(トキ)をしめしたモノだった。 時間をしめしたモノは。 数がよめなければ、カタチにできず。 このムラでは、たったヒトリの少女が。 1日ヒトツだけ、つくることができた。 フタツはつくっていけないよ、と言い伝えをまもり。 少女は、家にこもりながらも。 1日ヒトツだけ、つくっていた。 きっと、変わらない日々(ナガレ)。 終わらない、永遠につづく時間(トキ)を。 少女は過ごしていくのだろう、と思っていた。 今日もヒトリで、ヒトツの時間をつくり。 明日もヒトリで、ヒトツの時間をふやし。 未来永劫、ヒトリで。 ヒトツの、時間が増えていく。 時間をつくりながら思うのは。 夜は幼子の悲しい涙と。 幼い母の不安な涙が。 いくつも、こぼれおちていく。 少女の手には、たくさんの傷が増えている。 自分も、幼い頃は。 両親を悩ませていた。 それは、夜の瞬(マタタキ)を知らなかったから。 夜(イマ)を守っているのは、夜の瞬(マタタキ)のみ。 少女は瞬(マタタキ)に聞いてみた。 どうしたら、あななたちをわたし以外のヒトに教えられるのか。 夜の瞬(マタタキ)は、答えました。 ヒトは、世(ヨ)。 上を見ない。 それは、明るい、と思っていないから。 たったヒトツのあなたの教(コエ)で。 幼き母たちに教えて欲しい。 わたしたちは、あなたの一族同様に。 永遠にここで輝きを放つ。 誰も知らないのは、悲しい。 誰も知らないのは、ヒトリと同じ。 たくさん、知ってほしい。 瞬は、ヒトツじゃない。
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