時間(トキ)と守りし者の名は

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少女は世(アサ)が来ると。 ヒトツの時間を村の人々にみせて、こういった。 世(ヨ)、眠れないヒトは。 空の瞬(またたき)を数えましょう。 世(アサ)の空と同じように。 世(ヨ)の空の瞬は、あなたたちを守ってくれる。 決して、恐怖なんてない。 幼き子は、夜が闇(くら)くて怖いだけ。 思い出して、自分がなにも知らなかった時間(トキ)のことを。 幼き母は、世(ヨ)がくると。 ゆるい風の吹く中。 言葉を思い出し。 家の外にでてみる。 すると、幼き子は。 たのしそうに笑い、はしゃぎ。 世(ヨ)の瞬へ、両手を伸ばした。 幼き母は、自分が赤子(ムカシ)を思い出す。 母は、トキに。 あやしながらも。 素敵な、落ち着く優しい歌をうたった。 幼き母は、歌う。 歌ってもらった時間(ムカシ)を思い出しながら。 時間(ムカシ)を思い出しながら。 母を自分の傍に感じ。 感謝の涙をこぼした。 しばらくすると。 幼き子は満足したのか。 ぐっすりと、幼き母の胸の中で。 眠りの旅へ。 幼き母も、自分の母に抱かれる時間(ムカシ)を思い出し。 自らも、子を抱き。 久しぶりに、優しさの中で眠りについた。 そんな母子と、世の瞬(マタタキ)は。 時間(イマ)と共に過ぎることをいつしか。 喜びの涙へと代わることを自然と知り。 時間(ミライ)という記憶へ。 変わってゆくのだろう。 END
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