第五章 真実

15/40
前へ
/354ページ
次へ
「原発の情報が欲しいなら、浩美の母親の店に行け。もっと詳しい情報が聞けるよ。うちの病院のすぐ傍にある。何なら一緒に行ってやるよ」 義秋は頬を緩めて、光生に礼を言った。 「今日、偶然、浩美に会ったんだよ…。ほら、途中のコンビニで…」 「ああ…あそこを過ぎるとコンビニなんて無いからな…。みんな一日一回はあのコンビニを使うんじゃないか…」 光生は眉を寄せて言う。 「アレだろ…。デリヘルの送迎だろ…」 「らしいな…」 義秋は頷きながら言った。 すると、光生は義秋に顔を寄せた。 「浩美の母親の店は、それだけじゃないんだ…」 小さな声で光生は言う。 義秋も光生に顔を寄せる。 「どういう事だ…」 「原発の視察や調査に来る役人や業者、政治家などに女を派遣している」 光生は眉を吊り上げながら言った。 「俺もあの病院に赴任した当初、何度かあてがわれたよ」 義秋は光生の横顔をみて、 「高級売春組織って事か…」 そう言った。 「ああ…。あの店にも少なからず、原発からの金が流れているって事だ」 光生はそう言うと湯船を出た。 「大人になると汚れてしまっている部分も見えてしまうんだな…。大人になんてならなきゃよかったな…」 義秋に背を向けたまま言った。 そして、浴槽の縁で立ち止まり振り返った。 「お前にはもっと正確に見えているんじゃないのか…この狂った町の現状が…」 そう言って光生は微笑んだ。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加