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「原発の情報が欲しいなら、浩美の母親の店に行け。もっと詳しい情報が聞けるよ。うちの病院のすぐ傍にある。何なら一緒に行ってやるよ」
義秋は頬を緩めて、光生に礼を言った。
「今日、偶然、浩美に会ったんだよ…。ほら、途中のコンビニで…」
「ああ…あそこを過ぎるとコンビニなんて無いからな…。みんな一日一回はあのコンビニを使うんじゃないか…」
光生は眉を寄せて言う。
「アレだろ…。デリヘルの送迎だろ…」
「らしいな…」
義秋は頷きながら言った。
すると、光生は義秋に顔を寄せた。
「浩美の母親の店は、それだけじゃないんだ…」
小さな声で光生は言う。
義秋も光生に顔を寄せる。
「どういう事だ…」
「原発の視察や調査に来る役人や業者、政治家などに女を派遣している」
光生は眉を吊り上げながら言った。
「俺もあの病院に赴任した当初、何度かあてがわれたよ」
義秋は光生の横顔をみて、
「高級売春組織って事か…」
そう言った。
「ああ…。あの店にも少なからず、原発からの金が流れているって事だ」
光生はそう言うと湯船を出た。
「大人になると汚れてしまっている部分も見えてしまうんだな…。大人になんてならなきゃよかったな…」
義秋に背を向けたまま言った。
そして、浴槽の縁で立ち止まり振り返った。
「お前にはもっと正確に見えているんじゃないのか…この狂った町の現状が…」
そう言って光生は微笑んだ。
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