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節子は智子の部屋で、ドレッサーの前に座り、髪を梳かしていた。
智子の部屋は昔のままで、新しくなった旅館の隣にある古い民家の二階にあった。
幼い頃から、よくこの部屋には遊びに来ていて、節子にとっても自分の部屋の様な感覚だった。
「節子…」
既にベッドに入っている智子が、上半身を起して薄暗い部屋で髪を梳かしてる節子に声を掛けた。
「どげんしたと…」
髪を梳く手を止めて、鏡越しに智子を見た。
智子はベッドから抜け出して、ドレッサーの前に座る節子に後ろから抱き付いた。
「ちょ、ちょっとお…智子…」
「うるさかね…」
智子は節子の頬に頬を寄せた。
二人の微笑む顔がドレッサーの鏡に映った。
「変わらんね…私ら…」
「皺は増えたばってんね…」
節子は自分の胸の上にある智子の手に手を重ねた。
「そりゃ…その分、良か女になったとやけん。仕方無かよ…」
智子は節子に抱き付いたまま身体を揺すった。
二人で一緒に鏡を見ながら揺れる。
昔から二人は変わらなかった。
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