第五章 真実

17/40
前へ
/354ページ
次へ
「え…今、何て…」 智子は制服姿の節子に訊き返した。 「だけん、ヨシアと付き合う事になったとよ」 節子は満面の笑みを浮かべて、智子に抱き付いた。 「良かったやん」 智子も自分の事の様に喜んだ。 「うん。ありがとう」 「ちょっとお…。私と付き合うとじゃ無かっちゃけん。押し倒さんといてよ」 節子は智子にそう言われて、はしゃぐのを止め、智子の額に自分の額を付けた。 「あ、キスもせんといてよ」 智子は冗談っぽくそう言うと、微笑んで節子を抱きしめた。 「ばってん…良かったね」 節子の耳の横で呟く様に言う。 節子は強く頷いた。 「これも智子のおかげたい」 節子は智子の身体を揺らしながらそう言った。 「私は何もしとらん…。節子の粘り勝ちたいね…」 智子は節子の髪を優しく撫でた。 「何年かかったとかいな…」 「小学校の三年生からやけん…」 指を折って数え始める。 そんな節子を智子は強く抱きしめた。 「良か良か…。あんたが数えるとはこれから先の時間たい…。済んだ事はもう良かったい…」 節子はその言葉に頷いた。 「うん…」 あの日の事を二人は鮮明に覚えていた。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加