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「神谷には、市内に結婚前から付き合っとる女もおるとよ。ばってん私は平気。それも初めからそういう約束で結婚したけんね…」
智子も何度か、そんな話を誠二に聞かされた事があった。
そんな事はあり得ないと思い、軽く聞き流していたのだが、その話が事実である事が今、分かった。
「そうか…。じゃあ節子にとっては唯一の男やったったいね…ヨシアは」
智子は涙声になっているのを節子に悟られない様に話した。
「うん」
「今でん、ヨシアが好きね…」
「うん」
節子も涙声で声を震わせた。
智子は勢いよくベッドに起き上がった。
「節子…」
節子も起き上がり涙を拭いた。
そして智子と顔を見合わせた。
「行っておいで…」
智子はそう言うと節子の腕を引いた。
「外に出んでも旅館には行けるけん…。ほら、早く…」
節子は微笑んで、
「うん」
と、頷いた。
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