第五章 真実

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「神谷には、市内に結婚前から付き合っとる女もおるとよ。ばってん私は平気。それも初めからそういう約束で結婚したけんね…」 智子も何度か、そんな話を誠二に聞かされた事があった。 そんな事はあり得ないと思い、軽く聞き流していたのだが、その話が事実である事が今、分かった。 「そうか…。じゃあ節子にとっては唯一の男やったったいね…ヨシアは」 智子は涙声になっているのを節子に悟られない様に話した。 「うん」 「今でん、ヨシアが好きね…」 「うん」 節子も涙声で声を震わせた。 智子は勢いよくベッドに起き上がった。 「節子…」 節子も起き上がり涙を拭いた。 そして智子と顔を見合わせた。 「行っておいで…」 智子はそう言うと節子の腕を引いた。 「外に出んでも旅館には行けるけん…。ほら、早く…」 節子は微笑んで、 「うん」 と、頷いた。
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