第五章 真実

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義秋は窓際の椅子に座って、ウイスキーを飲みながらパソコンを開いていた。 原発の町の現状をレポートして、何処かの出版社に持ち込む。 もちろんある程度の実績のある義秋のレポート。 それなりの対応はしてくれるだろうとは考えていた。 しかし内容が内容だけに、改ざんされて有らぬ内容になって掲載されてしまう可能性も否めない。 それだけ信頼の置ける会社に頼む事が、一番頭を悩ませる所だった。 記事は面白可笑しい方が売れる。 それが現在の風潮だった。 そのために記事を改ざんし、面白可笑しく直して掲載される事など当たり前だった。 「誰に頼むかだな…」 義秋はそう呟くと、グラスに口を付けた。 音を立ててグラスの中の氷が崩れた。 月明かりに照らされるその氷をじっと見つめていると、部屋の入口の戸が開く音がして、廊下の光が差し込んだ。 「ヨシア…」 小さな声でそう言ったのは節子だった。 入口の戸が開き、節子が部屋に飛び込んできた。 椅子から立ち上がった義秋の胸に節子は抱き付いた。 「どうしたんだ…」 節子は義秋の胸に顔を埋めて何も答えなかった。 「節子…」 義秋は節子の身体を自分からゆっくり離し、 向かいの椅子に座らせた。 月の明かりに節子の頬が照らされる。 部屋にある冷蔵庫の上から伏せてあったグラスを取り、氷を入れてウイスキーを注いだ。 「ほら、飲め…」 そう言って節子の前に置いた。
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