第五章 真実

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節子はそのグラスに手を伸ばして、ゆっくりと口を付けた。 その姿がコマ送りの様に月明かりに照らされている。 義秋はパソコンの電源を落としながら節子を見ていた。 「綺麗な月ね…」 ウイスキーを一口飲むと節子はそう言った。 「ああ…月は昔と何にも変わらないな…」 義秋もグラスを手に取ると脚を組んだ。 ちらついていた雪もすっかり止み、綺麗に晴れ渡った夜空だった。 その月が海の水面に映っている。 「ヨシア…」 節子もその水面を見つめている様だった。 「何だい」 義秋が浴衣姿の節子を見ると、節子もグラスをテーブルに置いて、しっかりと義秋を見据えた。 「私の事は気にせんで良かけん、真実ば書いて。ヨシアが書いたレポートでお父さんや神谷が追い込まれても、それは仕方の無か事。噂もかなり前から有るとよ。それも私の耳には入らん様に、みんなが気ば掛けてくれとるとやけど、それでん私には分かるとよ…」 節子は決意に満ちた目をしていた。 それが義秋にも痛い程に分かった。 「分かったよ…」 義秋はそれだけ言って頷いた。
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