第五章 真実

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「じゃあさ、私、ちょっと街に用事があるけん、連れてって。私は買い物あるけん、その間にヨシアはホテルを引き払っておいで。節子、あんたもヨシアに付き合って」 智子はお茶を入れながら言った。 「ホテル代ももったい無かけんね…。その浮いた分で昼ごはんば食べさせて」 そう言ってお茶をすすった。 そう捲し立てられて義秋は圧倒されていた。 返事は「はい」しかない雰囲気だった。 「それから、お客様」 智子は義秋の顔を瞬きもせずに見る。 「当旅館の部屋にも、防犯上鍵が付いておりますので、就寝時にはその鍵を忘れずに掛けてお休み下さいね」 智子は怪しいイントネーションの標準語で言った。 その言葉を聞いた節子が何かに気付いた様に口に手を当てた。 そしてゆっくりと光生の顔を見た。 光生はわざとらしく目を逸らす。 節子は光生に見られた事に気付き、顔を赤らめて俯いた。 「まだしばらくおるっちゃろ…」 智子はテーブルに肘を付いて身を乗り出して義秋に聞く。 「ああ…。そのつもりだ」 義秋もお茶をすすりながら言った。 「それでしたら、ご宿泊は是非、当旅館をご利用下さいね」 智子は営業スマイルで席を立ち、セルフサービスのコーヒーカウンターへ向かった。 訳の分からない義秋は一人、怪訝な顔で外を見ていた。
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