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義秋は古谷旅館に大浴場にいた。
何故かこの大きな風呂が気に入ってしまった。
大浴場の隅で身体と頭を思い切り洗うと、昨日の酒が抜ける様に思える。
そうやって身体中を泡だらけにして洗っていると、横に光生が座った。
「お前、今日は休みなんだろ…」
泡が目に入りそうになるのを阻止しながら、義秋は光生に言った。
「ああ、土日、久々に休むよ。この町も久しぶりだ。ゆっくりさせてもらうさ」
光生は自分の身体を洗い始めた。
「人間、ずっと張り詰めていたら、いつか糸が切れてしまう。休むのも仕事の内だ」
義秋は頭からシャワーを浴び始める。
「そうだな…。何度も切れては結び、もう俺は結び目だらけだよ」
光生は身体を流す義秋を見ながら身体を洗った。
「お前みたいに女に癒されたいよ…」
そう小さな声で付け足す。
「え…、何か言ったか…」
目を閉じて頭を流す義秋が言う。
「ああ…ちょっと嫌味をな」
「嫌味…。なんでだ…」
身体を流し終えた義秋は、顔を手で拭いながら光生の方を見る。
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