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窓ガラスに垂れる水滴は、外気と店の中の気温差と湿度のせいだった。
店の前に停まった大型トラックの数は、その店の味の良さを示していて、そのトラックやタクシーの運転手などで店はいつもいっぱいだった。
石油ストーブにかけられた薄汚れたやかんの口は、一定のリズムで湯気を吐き出している。
男はその運転手たちの中にまぎれ、その店の名物のおでんと大盛の飯を食らう。
「兄ちゃん、お代わりいらんね」
その店を切り盛りする腰の曲がった老婆は、男に言う。
「大丈夫よ。ありがと」
男は老婆に微笑み小さく頭を下げた。
最近ようやく替えた、天井から吊られた液晶テレビでは昼のニュースをやっていた。
『先日起きました、松本栄一郎議員狙撃事件ですが、いまだに捜査の進展はなく、地元は厳戒態勢のままで、現在も数百名の警察官が非常線を張り、検問を続けております』
昼のニュースを他人事の様に読み上げるニュースキャスターは、それを溢れ返る事件の一つとして淡々と口にした。
「まだ、捕まっちょらんとね…。物騒たいねぇ…」
そのニュースに見入って箸を止めた運転手が呟く様に言った。
「こがんか田舎にゃ、関係無かばってんねぇ」
横に座ったタクシーの運転手がラーメンをすすりながら同じ様にニュースを見ていた。
男もその会話につられ、テレビに視線をやった。
現地の、雪深い目が痛くなる様な真っ白な映像が流れていた。
事件現場は北陸のその町出身の国会議員の自宅前で、そこで撃たれた松本栄一郎は即死だった。
しかし至近距離から撃たれた訳ではなく、手掛かりはまったく掴めていない様子だった。
「ご馳走さん」
男はそう言って立ち上がる。
その声に店主の老婆はゆっくりと歩いて、古いレジスターの前に移動した。
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