微熱

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  ましてや女を まともに幸せにした 経験のない自分。 男と女がすること そのものには引け目など 感じないのに、 その後に自信がない。 これは不毛だ。 「……酒飲むか」 それでも隣の部屋で 美園ちゃんが寝息を 立て始めていると思うと、 ここでジレンマを 抱えているのもそれはそれで愉しい。 煙草を買いに行って、 その愉しみから 逃れるのが勿体なくて、 ストックの焼酎を ロックにすることにした。 抱き上げた美園ちゃんの やわらかい身体の感触が まだ残っていて。 肴はそれと 自分の軽いジレンマで、 充分だった。 .
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