微熱

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  テーブルを跨いだせいで 少し崩れた裾を直し、 俺は今閉めたばかりの ドアを振り返った。 何となく後ろ髪を 引かれるのは、 独り身が長いせいではないと思う。 浮かんでは消える、 少しよこしまな発想を払うべく、 袖の中の煙草に手を伸ばした。 「……あれ?」 そういえばさっき、 美園ちゃんを待っている間に 切らしたんだっけか。 気付いた瞬間 買いに行けばよかったのだが、 先に買ったビールが ぬるくなるという 悲劇に遭いたくなくて、 飲んでからにしようと 公園でつい座ってしまったのだ。 .
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