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「春名先生が私の真似しちゃうと、逆効果かも知れないわね。ほら、こういうのは嫌われる覚悟でやらないと。」
「はぁ……」
飯島先生が、妖艶にカールした長い巻き髪を揺らしながら救急道具を片付けている。
第一印象で「美人」と即答できるその綺麗な横顔を見ながら、私は続きを待つ。
見た目はかなり若く見えるが、常識的に考えて少なくとも私より10前後は上だろう。
それもあって、なんとなく下に見られているというか、子供扱いされている気がする。
まぁ当然といえば当然だし、その方がプレッシャーがなくてむしろいいとも言えるのだけど。
確かに先生の言っていることもなんとなく分かる気がする。
ああやって叱るようなことを言ったり、背中を叩いたり。
そういうのは信頼関係が築いてないと逆効果だ。 反感を買うだけ。
つまり裏返せば、それは佐々木君達と先生の間に信頼関係が出来上がっているという証拠で。
あれでも、佐々木君、だいぶ先生に気を許してるみたいだった。
大人しく腕を治療させるなんて。
私の真剣な視線が届いたのかどうか、少しして飯島先生が口を開いた。
「まぁ、彼らにとって私は、安全基地なのよ。」
「アンゼン…キチ?」
分かるようで分からない、その言葉を繰り返す。
「ええ。心理学の用語なんだけどね。
不登校の子に多いんだけど、なんで不登校になるかって、大抵はクラスに居づらいからでしょ?」
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