第1章

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確かに。 不登校の理由は、勉強についていけないとか、クラスの仲間とうまく関係が作れないとか、どちらにしても基準になっているのは「クラス」だ。 「そういう子達って、クラスでは孤独を感じてるのよね。 クラスメートも、担任の先生にも、 気を許せなくて。 その点、保健医ってクラスとは関係なく存在してるでしょ? だから、保健室や保健医って、彼らにとってクラスから逃げてこれる唯一の場所、つまり安全基地ってわけ。」 「…なるほど。」 なんとなく、分かる気がする。 自分にもそんな経験があったはずだ。 体育で怪我をして、ひとり保健室に来た時。 クラスメートからも、厳しい先生からも離れて。 静かな時間が長れる保健室には自分と保健の先生しかいない。 どこか別世界に来たような、そう、ある種子供の頃に遊んだ秘密基地のような感覚を持った事を覚えている。 このままここにいて、授業をサボりたいなー、なんて思ったりして。 それに比べて不登校の子達は、もっと教室に対しての抵抗が強いんだ。 尚更、逃げ込みたい気持ちは大きいのだろう。 「もともとカウンセリングみたいなこともするでしょ、保健医って。 だから私たちが安全基地になることって、珍しくないって言うか、良くあることなんですよ。」 「…そうなんですね。」 話しながらチラッと部屋の時計を見た先生の動きに、そろそろ戻らなくてはならないことに気づく。
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