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田口先生が教師らしからぬぶりっ子のような表情で唇を尖らせる。
「…瀬戸純一(せと じゅんいち)って、今時の高校生知ってるんですか?」
「はわわっ、しつれーな!知ってますよぉーいくらなんでもー。」
「そうですか。」
瀬戸純一は、私たちが中学生か高校生の頃に女子生徒の間でかなり人気のあった俳優だ。
あの頃で20代だったから、今はもう40近いんじゃないだろうか。
「だって今だってドラマ出てるじゃないですかぁ。」
「ああ……そう言えば、そうですね。
確か教師役でしたっけ。」
「そうですっ!学園モノの、女子生徒に大人気のイケメン教師役ですっ♪」
「はぁ。」
確かにそんな内容のCMを最近見た気がする。
教師役だから少しだけ気にはなったものの、あまりにフィクションが濃くて見るのをやめたんだった。
「もぉー。あんな先生、現実にいたらいいですよねぇ。はぁ…」
うっとり夢見る瞳でどこかを見つめる彼女から視線を戻し、私はお弁当に再び向き合った。
*
「タバコ?」
不穏なワードが職員室に響く。
翌日の職員会議。
私は思わず呟いていた。
教頭の説明によると、昨晩、通学圏内にある公園でうちの制服を着て男子学生がタバコを吸っている姿が目撃されているのだという。
「これまでもその公園にはよく学生がたむろしていて、騒がしくて近所迷惑になっていたようです。
それで町内会の人が気にかけていたところ、そうした姿を目撃したと…」
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