26人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「はぁ……。」
ホームルームの前の時間。
まだ休み時間でざわついている教室の中で、その雑踏に紛れるようにしてため息をつく。
正直担任の人は誰だってやだろう、抜き打ちで持ち物検査なんて。
そんな、自分の生徒を疑うようなこと。
あんなに嬉々としてるのは桑野先生くらいだ。
キーンコーンカーンコーン
……でも、やらないわけにはいかない。
決まったことなのだから。
「ふぅ……」
私は改めて息を整えると、教壇に登った。
それを合図に静まった教室内。
日直が声をかけ、授業開始の挨拶をする。
「せんせー、今日は何するんですかー?」
程なくして、クラスメートの声が飛んでくる。
私はそれに応えるように口を開いた。
「今日は、まず初めに持ち物検査を行います。」
ざわざわ、と一気に騒がしくなる教室。
そりゃそうだろう。
そんな不穏な単語を聞けば。普通の反応だ。
「実は昨晩、うちの生徒がーー」
ガラッ
説明しようとした私の声を遮るように、大きな音を立てて教室のドアが開いた。
「失礼」
「……桑野先生。」
堂々と教室に入ってくる桑野先生の姿を見て、正直動揺を隠すのに必死だった。
なんで?
確かにホームルームの時間、見回りに来るって言ってたけど、ここはG組ですよ?
チャイムが鳴ってすぐ来たってことは、どう考えてもG組に1番に来たということだ。
最初のコメントを投稿しよう!