第1章

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* 「はぁ……。」 ホームルームの前の時間。 まだ休み時間でざわついている教室の中で、その雑踏に紛れるようにしてため息をつく。 正直担任の人は誰だってやだろう、抜き打ちで持ち物検査なんて。 そんな、自分の生徒を疑うようなこと。 あんなに嬉々としてるのは桑野先生くらいだ。 キーンコーンカーンコーン ……でも、やらないわけにはいかない。 決まったことなのだから。 「ふぅ……」 私は改めて息を整えると、教壇に登った。 それを合図に静まった教室内。 日直が声をかけ、授業開始の挨拶をする。 「せんせー、今日は何するんですかー?」 程なくして、クラスメートの声が飛んでくる。 私はそれに応えるように口を開いた。 「今日は、まず初めに持ち物検査を行います。」 ざわざわ、と一気に騒がしくなる教室。 そりゃそうだろう。 そんな不穏な単語を聞けば。普通の反応だ。 「実は昨晩、うちの生徒がーー」 ガラッ 説明しようとした私の声を遮るように、大きな音を立てて教室のドアが開いた。 「失礼」 「……桑野先生。」 堂々と教室に入ってくる桑野先生の姿を見て、正直動揺を隠すのに必死だった。 なんで? 確かにホームルームの時間、見回りに来るって言ってたけど、ここはG組ですよ? チャイムが鳴ってすぐ来たってことは、どう考えてもG組に1番に来たということだ。
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