第1章

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両手を差し出してプリントを受け取りながら、長身を見上げ、その顔を一瞥する。 感情の読めない目が冷やかにこちらを見下ろしていた。 中藤先生、見た目は格好いいんだから、もう少し愛想よくすればいいのに。 もったいない。 そんなことを思いながら、踵を返し、ようやく自席について授業準備を始めた。 しばらくすると朝の職員会議が始まり、それが終わるころ、朝礼のチャイムが鳴る。 それぞれの教師が一斉に椅子から立ち上がり、自分の担当教室へと向かっていく。 私も出席簿と1限の授業道具を持って、2年G組へと向かう。 2年生の教室は職員室があるのと同じ2階だから、長い廊下をG組のある奥まで歩いていく。 ふと窓から校門を見下ろすと、遅刻ギリギリアウトの生徒たちが大急ぎで走っているのが見えた。 「春名先生。」 その中に自分のクラスの生徒がいないか探していると、後ろから声をかけられ、振り返る。 中藤先生が後ろから歩いてきて私の隣に並んだ。 「今日、欠席連絡は。」 「いえ、誰も入ってません。」 「そうですか。今日は来てるといいんですが。」 「…そうですね。」 「…では、また後ほど。」 「はい。お疲れ様です。」 先生が担任するD組の教室に差し掛かり、教室へ入っていく先生と別れる。 実は、中藤先生は私が担任するG組の、副担任でもある。 初めて担任を持つ、まだ経験の浅い私の補佐役として、学年主任である中藤先生がサポートとしてくれているのだ。 勿論それが、公の理由なのだけど…。
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