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教室の後ろの方から、誰かが机を蹴り飛ばした音が響いた。
その場にいた全員が一瞬身体を縮こませたあと、音の主を振り返った。
皆の視線が集まる中、一番後ろの席から長身の生徒が立ち上がる。
気崩した制服。
目を見張るような明るい金髪。
耳元に光るシルバーのピアス。
そんな様相の男子生徒が、ゆっくりと前に進み出ながら、口を開いた。
「ごちゃごちゃうるせーんだよ。」
その声は低く、その場にいる全員の口を黙らせる。
空気が一瞬で張り詰めたように変わった。
「大牙(たいが)…」
羽島君がその名を呼ぶ。
中藤先生がこのクラスの副担任をしている本当の理由。
それは、このクラスに彼ーー佐々木 大牙(ささき たいが)が所属しているから。
"学年一の問題児"
その名は職員室でも有名だ。
素行不良。
不登校気味。
一年生の時に、停学処分経験あり。
その問題児がいるクラスの担任が、なぜか新米教師の私になってしまった。
これが、学年主任の中藤先生に補佐をして頂いている真の理由である。
佐々木君は教壇の前まで来ると、こちらには目線もくれずに、男子二人に向かって口を開いた。
「行くぞ。」
たったその一言で、羽島君と五十嵐君はあっさり教壇から降りた。
二人を率いて堂々と前のドアから教室を出ていこうとする佐々木君の後ろ姿に声をかける。
「ーー佐々木君。」
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