第1章

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ピタッと、佐々木君の足が止まった。 顔だけで振り返る。 「そのピアス、校則違反だって言ったよね。」 ゆっくり体も振り返った佐々木君が、今日初めて私の目を見た。 瞬間、ゾクリと震える体の芯。 その目に見られると、いつもそうだ。 まるで囚われたように動けなくなる。 彼の目は、人の目じゃない。 そう、まるで 獣のよう。 森の中に潜み、獲物を狙う。 その目に見つかった者は、逃れることはできない。 気づいた時には、もう捉えられているーー 私が瞬きもなくその目から視線を外せなくなっていると、突然視界の中で佐々木君が動いた。 左手が勢い良く耳元を掴むと、次の瞬間、何かを床に投げつけた。 パシーンッ 小さいながらも鋭い音を立ててピアスが私の足元に転がる。 「………。」 これで満足か、とでも言いたげな視線を最後に投げつけて、また廊下へ向かって歩き出した。 私はしゃがんで落ちたピアスを拾う。 「……。」 その時気づいた。 ピアスが転がった床に、微かながら血がついている。 はっとして顔をあげた時、もう教室のドアを出ていく寸前の佐々木君を捉えた。 その手元に、確かに見えた血の跡。 制服の袖にも滲んでいる。 「…まっ」 「先生、もう朝礼の時間です。」 待って、と言おうとした私を、川島さんの凜とした声が遮る。
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