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「………。」
私は、もう彼らの姿が消えてしまった扉と、川島さんの真剣な表情を見比べる。
「川島さん、あなたが朝礼進めておいて。」
「えっ……先生!」
私は川島さんに出席簿を半ば押し付けるように渡すと、彼らを追って教室を出た。
手に怪我をしていたということは、また喧嘩でもしたのかな。
結構ひどい出血だった。
あのまま放って一日過ごしたら、きっとひどくなる。
それに何より、授業を放棄した彼らを担任として連れ戻さないと。
2階の長い廊下にはもう誰の姿もなく、階段で1階に降りて昇降口へと向かう。
けれど1階に降りた瞬間、予想外の光景が目に飛び込んできた。
「離せよっ」
「だーめっ。出血多量で死にたいの?」
「………。」
昇降口の手前、保健室に片手を引っ張られながら連れ込まれる佐々木君の姿。
その手を掴んでいるのは、白衣姿で長い黒髪を片側にまとめ、やたらスタイルのいい女性。
保健医の飯島利夏(いいじま りか)先生だ。
教師らしからぬその美貌に、男子生徒の間ではかなりの人気だったりするらしい。
女子に人気なのが中藤先生だとすれば、ちょうどその反対で男子に人気なのが飯島先生と言ったところか。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
私は歩を進めると、ガラッと音を立てて保健室のドアを開いた。
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