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「いっ……つ………」
「はい、我慢ーー。ちょっと、そこの二人も抑えるの手伝って。」
保健室の中は、腕を差し出して顔をしかめている佐々木君と、その腕を消毒液とガーゼで処置している飯島先生、それから佐々木君の体を抑える羽島君と五十嵐君という、大所帯だった。
「あ、春名先生。お迎えですか?」
飯島先生がガーゼを巻きながら、私に気づいて声をかける。
「ええ…」
「ちょっと待ってくださいねー。あと少しで終わりますから。」
「………。」
私が視線を佐々木君に向けると、彼はすっと目を逸らしてどこか壁を見つめた。
「朝から喧嘩したみたいですよー。」
「えっ!?」
手慣れた様子で処置を施しながら淡々と語る飯島先生に、私は驚いて聞き返す。
「なんか登校中、曲がり角で自転車同士でとぶつかりそうになって、どっちが悪いとかで揉めたとか?」
「あれはあっちが悪かったんだよ!!めちゃくちゃスピード出しててよぉ」
「そーだよ、大牙は悪くねぇ」
「悪くないわけないでしょ!そんなことで殴りかかる人がいますか。」
口々に口答えした羽島君と五十嵐君を一喝する飯島先生の声。
……なんだか、私よりも教師らしい。
「そう…ですか。」
私はそう呟くと、改めて佐々木君を振り返った。
「それで、相手の人は?」
「幸い、向こうも急いでたみたいで、逃げるように去っていったみたいですよ。ほんと、大事にならなくて良かった。」
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