第3章

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「行ったんじゃない! 建物の前まで行っただけ!」 そんな私の不純な思考を断ち切るように、優木さんが声を上げた。 「ウチは…っ、連れてかれただけだもんっ!」 「…じゃあ、佐々木君が無理矢理?」 「……っ」 私の質問には答えず、また俯いて、悔しそうな顔を長い髪の中に隠した。 ガシャンッ!! その時、ひときわ激しい音がして、とっ組み合うふたりがチョークの入った箱を床にたたき落としたことに気づく。 「なにやってる!!」 その音を聞きつけて、近くの教室にいたらしい教師たちがG組に走り込んできた。 「やめなさい!」 男性教師が二人がかりで佐々木君と柏原君を引き剥がした。 無言の目配せが、その先生達と私の間で行われる。 「…優木さん。 あなたも一緒に保健室に。」 私はそう言い残すと、まだ緊迫した空気の継続する二人の元に歩いていった。
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