26人が本棚に入れています
本棚に追加
「行ったんじゃない!
建物の前まで行っただけ!」
そんな私の不純な思考を断ち切るように、優木さんが声を上げた。
「ウチは…っ、連れてかれただけだもんっ!」
「…じゃあ、佐々木君が無理矢理?」
「……っ」
私の質問には答えず、また俯いて、悔しそうな顔を長い髪の中に隠した。
ガシャンッ!!
その時、ひときわ激しい音がして、とっ組み合うふたりがチョークの入った箱を床にたたき落としたことに気づく。
「なにやってる!!」
その音を聞きつけて、近くの教室にいたらしい教師たちがG組に走り込んできた。
「やめなさい!」
男性教師が二人がかりで佐々木君と柏原君を引き剥がした。
無言の目配せが、その先生達と私の間で行われる。
「…優木さん。
あなたも一緒に保健室に。」
私はそう言い残すと、まだ緊迫した空気の継続する二人の元に歩いていった。
最初のコメントを投稿しよう!