16歳のダイアリー

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と、 タクミさんはニコニコしながら言ってきた。 そうだ、 わたし、 なに怒ってんだろ。 怒るつもりなんかなかったのに。 タクミさんに聞いてほしくてここに来たのに。 女子たちはあきれて離れていった。 「なんだよ、 部室の前で俺を待ってた?」 「いいえ」 図星過ぎて素直になれなかった。 「だって、 そこの角のところにいたじゃん。 見えてたよ」 うっ!見透かされてたか。 謙虚になれない。 「なんだよ、 用あったんでしょ」 「もういい」 「もういいって、 やっぱ、 用あったんじゃない。 ねえ、 ナー二すねてんの」 彼は、 優しく穏やかに、 そして恋人に言うみたいに親しみをこめて言ってくれた。 わたしは、 自分の心をいつも聞いてくれた相手が、 “自分のもの”じゃないことを、 あの2人の女子に気付かされたのだ。 タクミさんは、 わたしの専属の相談相手じゃないんだ。 今も、 皆のアイドルなんだ。 ハンド部のエースで、 カッコいいアイドルなんだよね。
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