16歳のダイアリー

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「山梨か、 もう山は色づいてきれいだろうな、 会いに行ったらいいじゃん、 角谷さんに」 と、 彼は言った。 「ううん。 もう会わない。 会えないんだ。 終わりになったんだ」 強がって言ったけれど、 声は震えていた。 わたしは、 そばにあったカバンからずっと入れっぱなしにしていた角谷さんの手紙を黙って彼に渡した。 タクミさんはじいっと読んでいた。 そして、 読み終わって 「角谷さん、 大変だよなあ。 親父さんの入院は知っていたんだ。 その病院に行き来するんで、 時々俺の単車使ったりしていたからね」 「亡くなったことも知っていた?」 「うん」 「お母さんの郷里が山梨で、 それでそっちに引っ越すのも」 「なんで、 教えてくれなかったの?」 「人の家の事情、 べらべらしゃべれんでしょーが」 「うん」 またしても、 彼の言うことは“正しかった”。
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